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今回は、体の中で大切な働きをしている「リン」についてのお話です。「リン」は人体に豊富に存在する元素の一つで、ほとんどが「リン酸」として存在しています。体内の「リン酸」総量は約700gで、その85%はカルシウムと結合して骨に蓄えられています。残りの15%は、DNA・RNAといった核酸、細胞膜をつくるリン脂質、エネルギー産生に関わる物質、さらには酸素運搬を担うヘモグロビンの制御成分として細胞内に存在します。血液中にある「リン酸」は全体のわずか0.1%にすぎません。
一日に摂取される「リン酸」は約1400mgで、そのうち約800mgが腸管から吸収され、残りは便として排泄されます。腸管での「リン酸」の吸収は、カルシウムと同様にビタミンDによって増加します。腎臓からは腸管からの吸収された量とほぼ同じ約800mgが排泄され、これにより体内の「リン酸」バランスが保たれています。また、骨では1日当たり約200mgの「リン酸」が出入りしており、骨に蓄えられた約600gの「リン酸」が体内変動に対する大きなバッファーとして働いています。
成人の血中リン濃度の正常値は、2.5-4.5mg/dLで、副甲状腺ホルモン、ビタミンD、FGF23が、腸管での吸収、骨からの溶出、腎からの排泄を通じて調節しています。
大量のリン摂取、細胞内から細胞外へのリンの移動、骨破壊の亢進、副甲状腺機能低下症、腎機能障害によるリン排泄障害などが原因となります。高リン血症が続くと皮膚や関節内、血管壁にカルシウムが沈着し、さまざまな障害を引き起こします。
大量のアルコール摂取、リン摂取量低下、長期栄養障害後の栄養再開時、副甲状腺機能亢進症、腫瘍などによるFGF23の過剰産生などが原因となります。急激に血中リンが低下すると心不全による死亡につながりますので注意が必要です。
腎障害のある方、骨折を繰り返す方、骨密度が低い方は血中リンの測定をお勧めします。異常がみられる場合は、内分泌専門医への受診を検討してください。
済生会今治第二病院
院長 松浦 文三
