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リニアックは通常照射から強度変調放射線治療(IMRT)、定位放射線治療まで行うことができる汎用機です。
当院では、2024年5月から高精度照射に対応可能な放射線治療機器Versa HDに更新しました。更新に伴い、光学式カメラシステムを使用した体表面イメージガイド放射線治療が可能になるCatalyst +HDを導入しました。
新機器では回転しながら強度変調放射線治療(IMRT)が行える強度変調回転放射線治療(VMAT)が可能になりました。また、左乳房への深吸気息止め照射も行っています。
X線エネルギーは4MV,6MV,10MV、6MVFFF、10MVFFFの5本です。
6FFF(1400MU/min)と10FFF(2200MU/min)は今回から追加した高線量率モードになります。高線量率モードは短時間での放射線治療が可能になり、照射中の患者さまの動きによる影響を小さくできます。
電子線のエネルギーは、4MeV,6MeV,9MeV,12MeV,15MeVの5本です。使用用途は乳房への追加(Boost)照射、外科手術後のケロイド、表在性腫瘍などに使われます。
80対160枚のリーフからなる高精度で高精細なマルチリーフコリメータ(MLC)です。
MLCを利用した不整形照射野を最大サイズまで作成できます。VMATをはじめとした強度変調放射線治療においても1度に広い範囲を照射でき、治療時間の短縮が可能で患者様の負担軽減に寄与します。
従来の3次元方向(縦・横・高さ)と各回転軸(Pitch、Roll、Yaw)の計6軸で算出された位置補正値をオンラインで受け取り、ワンタッチでサブミリメートルの6軸補正が可能です。図の赤外線カメラで専用のフレームを感知し、6軸での移動量を算出しています。
2D、3D、4Dの画像取得が可能なkVイメージングシステムです。
高画像な3DコーンビームCT(CBCT)画像を用いた自動位置合わせ機能に優れており正確かつ迅速な位置合わせをアシストします。
呼吸性移動のある標的には自由呼吸下で4DCBCT(Symmetry)を撮影して位置合わせを行うことが可能です。
治療用MVビームの照射中においても、KVの2D、3D、4D画像の撮影が可能です。高い精度が要求される強度変調放射線治療や定位放射線治療においても治療中のターゲット位置を検証でき正しく治療が行えていたのか確認することが可能です。
可視光を利用した体表面画像誘導放射線治療(SIGRT)システムです。
プロジェクターから波長405nmの青色の可視光を投影し、患者体表面からの反射光をCCDカメラで捉えて処理することで3次元体表面画像を再構成します。
Catalystのメリットは被ばくゼロで体表面スキャンカラーマッピングによるセットアップ支援があります。写真の様に位置が高ければ赤色で低ければ黄色で体表面に表示します。この機能のおかげでセットアップに必要なマーキングの減少につながっています。
また、リアルタイムモニタリングもでき、治療中の予期しない動きを教えてくれる機能もあります。
Catalystの機能を応用した治療に深吸気息止め照射(DIBH)があります。
心臓線量を低減させ、放射線治療の副作用を軽減させる照射方法です。
当院では左乳房を治療される60歳以下の方で、治療内容にご理解があり、深吸気息止めが再現できる方を対象にしています。
左乳房を治療される場合、近くに心臓があるので、通常の照射方法だと自由呼吸時のように心臓にも線量がかかります。そこで大きく息を吸った状態で止めて肺を膨らまし、深吸気時のように心臓と左乳房の距離をとって心臓への線量を低減させます。
当院のフローチャートをお示しいたします。
深吸気息止めの再現性が大切になりますので練習のために2回ほど来院していただき、治療が終わるまでの期間中はご自宅での練習をお願いしています。
VMATとは、従来の強度変調放射線治療(IMRT: Intensity Modulated Radiation Therapy)の進化形であり、ガントリーを回転しながら、放出するX線の量を加減し治療を行います。
前立腺癌治療においては手術室と連携し泌尿器科医に協力していただき前立腺に3個程度の金マーカ、前立腺と直腸の間にSpaseOAR(直腸線量を低減することを目標)を挿入して合併症の低減を(晩期有害事象)考慮しています。
放射線を集中的に照射するために、治療部位の位置合わせをより精密に行う必要があります。治療中は体全体を容易に動かないように固定するなどの対策を講じることにより、より正確な照射が可能となります。
呼吸状態を観察し、一定のタイミングのみ放射線の照射を行う「呼吸同期放射線治療」を組み合わせることにより、肺がんや肝がんに対する高精度な治療を実現します。定位放射線治療の適応となる腫瘍の大きさは、直径が5cm以下の腫瘍です。
放射線治療専門医・看護師・診療放射線技師・医学物理士の役割について
手術・化学療法と並ぶがん治療の1つである放射線治療は重要な役割を担い、患者様に合わせた安心・安全な治療を行うために様々な多種多様の医療スタッフが連携して業務を行っております。
〇放射線治療専門医は診察・検査結果をもとに、どの部位にどれだけの放射線をどのように照射するのかを計画立案します。定期的に診察を行い必要に応じ適切な処置行います。
〇看護師は患者様やご家族が治療内容について理解し、治療の継続やセルフケアに主体的に取り組めるようにご支援させていただきます。
放射線治療は長い場合で7週間程度の通院が必要になります。長い治療をやり遂げることは、身体的にも精神的にも辛いものです。
日々の関わりの中で声かけを行い体調や日常生活に問題が生じる可能性がないかなどをアセスメントし、安心して治療が完遂出来るように寄り添っていけたらと考えています。
医師・診療放射線技師・医学物理士とのミーティングを毎朝、カンファレンス週1回実施して治療開始から、治療中の経過や変化など情報共有し対応などを検討しています。
新たに説明室を増設してプライバシーの保護にも努めております、不安や疑問など話しにくいことも気軽に相談して頂ければと思います。
〇診療放射線技師・放射線治療専門放射線技師は位置合わせを行い、治療部位への正確な照射を行います。治療計画に用いるCT撮影、固定具・補助具の作製、投与線量に関わる線量計算、放射線治療装置全般の精度管理など
患者様に対する診療業務はもちろん医療安全対策まで行っています。
〇医学物理士・放射線治療品質管理士は治療装置の定期的な精度・品質管理や治療計画の最適化及び評価など高精度の放射線治療をサポートしています。
多職種の医療スタッフがチームとなりお互いにコミュニケーションを取り合い、それぞれの専門分野で役割を全うして密に連携・補完し合い、患者様に安心で・安全な治療の提供に努めています。
ご質問などはお気軽に治療スタッフにお声掛け下さい。
喉頭癌・咽頭癌・舌癌などの頭頸部腫瘍、食道癌、肺癌、前立腺癌、皮膚癌、悪性リンパ腫等は、放射線治療が有効で、病気の状態によっては根治的な治療が可能です。
乳癌の乳房温存療法や脳腫瘍、直腸癌等のように、手術と組み合わせることで治療効果を高める方法もあります。
その他、病変が限局している場合には、多くの腫瘍が放射線治療の対象になります。
転移がある場合や根治的な治療が困難な場合でも、症状の緩和を目的として放射線治療を行うことがあります。
また腫瘍のほか、甲状腺眼症やケロイド等のような一部の良性疾患でも放射線治療が有効な場合があります。
放射線治療の可否を含め、手術や化学療法等、他の治療方法との選択につきましては、病気の種類や進行度、全身状態等により異なりますので、それぞれの疾患を専門とする診療科の担当医とよくご相談の上、ご判断ください。
放射線科初診は、紹介制・予約制になっています。ご紹介やご予約のない患者様の直接受診・予約外受診は受け付けておりません。
また、当院の放射線科治療外来の受診歴のない患者さまやご家族等による、電話や訪問などでのお問い合わせ(放射線治療実施の可否や治療に要する期間・料金等のご質問)にはお答えしておりません。
これらの理由は、病気の種類や病状等に関する詳細なデータがなければ、放射線治療実施の可否や方法を含め判断できないからです。
以下のいずれかの手続きにより予約受診していただくか、当該疾患で現在掛かっている担当医を経由してお問い合わせください。
当院の他科を受診中の方は、担当医よりご紹介・ご予約手続きの上、受診してください。
他の医療機関さまからのご紹介の場合は、総合医療支援室を経由してご予約いただき、紹介状と検査データやCT等の画像フィルム、手術記録の写しなどをご持参の上、受診をお願いします。
最新の診療予定表 (外来診察担当医表にリンク)