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脳卒中 一次脳卒中センターとしての当院の取り組み

印刷ページ表示 更新日:2025年1月2日更新

脳卒中 より早く治療を行うために

担当医師
河合 辰典 (かわい たつのり)
済生会今治病院 脳神経外科部長

院外誌きぼう(2023年5月) 第78号 特集ページより抜粋
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一次脳卒中センターとしての当院と地域との取り組み

ある日突然、体がうまく動かなくなる。前触れなく急に、うまく話せなくなる。

こういった症状が起きたら、脳卒中の可能性が考えられます。

脳卒中は後遺症を残さないために、いかに早く治療に結び付けられるかが大切です。

そのために当院が取り組んでいることを、脳神経外科部長が紹介します。

 

脳卒中について

最も多いのは脳梗塞

脳卒中は突然起こる脳の血管障害全般のことを指します。大きく分けると、脳梗塞(のうこうそく)、脳出血、くも膜下出血の3つがあり、中でも半数以上を占めるのが脳梗塞です。

脳梗塞とは脳の血管が詰まってしまう病気で、高齢者になれば、ほぼどなたにでも起こり得ます。原因も大きく3つあります。最も多いのは、高血圧が引き起こすものです。血圧が高いと血管に負担がかかり、傷んだ血管は詰まりやすくなります。細動脈が障害され、小さな脳梗塞を起こし、通常は点滴とリハビリテーション治療の対象となります。

2つめはアテローム血栓性脳梗塞で、糖尿病や脂質異常症などの動脈硬化が進みやすい病気を持つ方に多く発症します。大~中血管の狭窄を伴うことが多く、単発~多発までさまざまな脳梗塞を起こします。

3つめが心原性脳梗塞です。不整脈や弁膜症といった心臓の病気に関連し、心臓にできた血栓が脳に飛び、突然、脳の血管を詰まらせてしまいます。発症は急激で、比較的大きな血管をふさいでしまうと、片麻痺や意識・言語障害が出現します。最近はこの心原性脳梗塞が多く見られます。不整脈の中でも心房細動の方が多いのですが、この心房細動は高齢になればなるほど発生しやすい。要するに、高齢化が進み、心房細動の方が増え、結果的に心原性脳梗塞も増えています。

 

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●脳出血とは

脳の小さな血管が破れて、脳の中で出血する病気

●くも膜下出血とは

脳を覆う「くも膜」の血管が破れるもので、動脈にできた「こぶ」が破裂して起こることが多い病気

 

治療について

現在はカテーテルに注力

脳の血管が詰まると、脳細胞は虚血状態になります。血液が足りなくなると、脳細胞は早ければ2~3時間で死んでしまいます。その死んだ場所の働きが手足を動かす場所であれば半身マヒになり、言葉を話す場所であれば失語症につながります。

脳梗塞にならないように、あるいは、なってしまってもどれだけダメージを少なくして良くできるか。それが私たち脳神経外科医のテーマになります。そのために、できるだけ早い時間で詰まったものを開通させることに、私たちは力を入れています。

以前は、t-PAという血栓溶解剤の静脈投与という治療法しかありませんでした。発症4時間半以内であれば使用が可能ですが、大きな血管が詰まってしまった場合の再開通率は、多く見ても30%以下に過ぎません。

それを補う治療法として、ここ5~6年はカテーテルを用いて血栓を回収する血管内手術に力を入れています。開通すれば、その瞬間に劇的な症状改善がみられる方もいらっしゃいます。あるいは、脳梗塞の程度が少なく抑えられる方もおられます。当院の実績でも、8~9割の方は開通することができています。ただし開通しても、すでに脳梗塞が完成していたら改善につながらないため、治療までの時間が非常に重要です。当院では2023年1月に血管造影室を新装し、手術がより早く正確に行えるようになりました。

【従来】
t-PA療法(血栓溶解療法)
・血栓を溶かす薬を使う
・発生後約4時間半以内
・開通率は約3割

         

【近年】
血栓回収
・カテーテル手術を行う
・劇的改善が期待される
・開通率は8割以上

 

体制づくりについて

「その後」のケアも目指す

先ほどからお話ししていますように、脳卒中の治療はスピードが重要です。今治市では他の地域に先駆け、当院をはじめ市内の3施設で、10年以上前からホットラインの輪番制を取り入れています。それもあり、今治市は脳卒中の患者さまにかなり早く対応することができます。

ただ、ホットラインで救急隊から患者さまが素早く搬送されても、院内の体制が整っていなければいけません。そこで当院では脳卒中チームを作り、当番日にはわれわれ脳神経外科医以外にも、看護師、診療放射線技師、臨床工学技士といったスタッフが待機しています。ここ2年くらいで、治療体制はかなり整備されてきています。

当院は現在、一次脳卒中センターに認定されています。これは緊急の血栓回収やt-PAを使った治療ができる施設を示すもので、愛媛では当院をはじめ12の施設が認定されています(2023年3月時点)。

さらに一次脳卒中センターのコア施設を目指すうえで、患者さまの退院後の生活への関与も含めた体制づくりも進めています。今年度は脳卒中の相談窓口を立ち上げ、退院時の相談や後遺症のお悩みに対して支援できるようにしていきたいと思っています。

脳卒中は突発的に起こる病気で、片麻痺といって、体の左右どちらかが急に動かなくなることが多くあります。特に顔や手は分かりやすいので、ご本人や周りの方がおかしいと思ったら、迷わず救急車を呼んでください。

皆さんの中には、救急車をできるだけ家に呼びたくないという方や、もう1日だけ様子を見ていようと思われる方がいらっしゃると思います。ただ、何度も繰り返しますが、脳卒中は治療までの時間が非常に大切な病気です。今治にはホットライン制度もあります。ご家族の方も意識していただき、迅速な治療につなげていきましょう。

 

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▲脳卒中は文字通り「スピード命」。おかしいなと思ったら、迷わず救急車を呼んでください。

 

 

 

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